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Company That Escapes

半金商売の夜逃げ外注

CAUTION!

海外では経営者を追えない

いずれの国であれ会社を設立し、そして会社を解散することは容易でないと一般人は考えがちですが、悪意をもって悪事を為そうとする輩にとっては何でも無いことです。中国でも、タイでも、日本でも、ベトナムでも、法の目をかい潜って傍若無人に悪いことをする人は必ずいます。日本では金型製造における支払い条件が100%後払いとなることも多いので、その場合、故意に悪事を働く余地は発注側にしかありません。そう、お金が支払われないということです。ところが、海外においては金型発注の際に、前金を支払うことが一般的なので、故意に悪事を働く余地がサプライヤー側にも発生します。「注文時50%、検収時50%」のケースもあれば、「注文時30%、T0時30%、検収時40%」など、条件は国によっても会社規模によっても様々ですが、前金が発生することでサプライヤーがそのお金を持ち逃げして、蒸発してしまうことがあります。中国などではそのような「半金ビジネス」の被害に遭われた日系企業のお話を伺う機会がかなり多くありました。安い見積もり価格で複数の企業から相当数まとまった受注を請けて、「加工中です」「まだNG箇所があって」「今週は出張中で」などなど、のらりくらりとやり取りを引き延ばし、ある日突然連絡が取れなくなる。隣の地域に逃げてしまえば、警察も、法務局も管轄が変わり一気に追いかけ辛くなるのです。地元の業者であれば新参の怪しいサプライヤーに対してフラグが起ちますが、「ここで20年、精密金型を作っています」と嘘をつかれれば海外の発注者には危険を察知しようがないのです。在留資格もない海外の発注者を現地警察も相手にしてくれるはずもなく。正式に訴えを起こして裁判でもすれば、あるいは悪徳サプライヤーを探し出して追い込めるかもしれませんが、勝てるかどうか、サプライヤーが見つかるかどうかも分からない状況で、金型代より高い裁判費用を捻出する企業はありません。結局は、「半金ビジネス」サプライヤーの逃げ得となってしまうのです。

T0で勝手に終了する金型屋

海外の場合、悪意があるわけではないのに結果、「半金ビジネス」のようになっているサプライヤーもあります。タイのあるローカルの金型屋では、次から次へと仕事が舞い込み常に繁忙状態で全体的には評判の良い企業です。しかし、一部の日系企業からは「あのサプライヤーには本当に痛い目にあった」との最低評価が聞かれます。このローカル型屋はとにかく、めちゃくちゃ安い。日系の型屋の半値ほどですが、何も営業戦略として途轍もない無理をしているわけではなく、その安価が標準価格なのです。ローカル型屋に最低評価を下した日系企業に何があったのかを伺ったところ「T0サンプルがでてきて、修正箇所を伝えたが一切対応をしてくれなかった」というのです。
射出成形用金型の製作では、仕様を決め、設計し、材料を手配し、加工し、仕上げて、組み立てることで金型を完成させます。完成後に実際にプラスチック樹脂を流し込んでサンプル取りを行う、最初の試作トライが実施されます。これがT0(トライ0回目の意)です。とりあえず形がでてくるので、その後、T0サンプルを評価し、金型を修正して再び試作トライします。1回目の修正後のトライなのでT1です。金型の難易度や型屋の実力によって、T0やT1で金型が合格になる場合もあれば、T5、T6と修正を重ねなければならない金型もあります。ローカル型屋ではこの修正に対応せず、T0サンプルである程度の形がでた時点から全く話が進まなかったとのこと。結局、発注時の半金を前払いしたのみで頓挫し、もう金型合格の見込みはなく塩漬け状態だそうです。
日系企業側からの言い分だけを伺えば、一見、悪徳「半金ビジネス」サプライヤーに引っかかったようにも見えますが、おそらく実態は異なります。我々も含めた日系の型屋は、金型の見積もり時点で「修正は何回くらいで合格まで持っていけそうか?」「成形品の寸法出しに苦労しそうな形状はどこか?」「形状的にバリ(金型から樹脂がはみ出した部分が成形品の縁に出る)は抑えられるか?」「ガスはどこに滞留するか?エアベントはどこで切る?」などなど、お客様の求める品質に応じて、ありとあらゆる想定を行ってその金型の難易度や修正回数、量産性などを見積もります。当然、T0、T1では到底合格まで持ってはいけない難度だと判断する金型は、合格するまでの追い込み修正料も金型価格に含めることになります。翻って、T0サンプルが形になった時点で終了する金型であれば、半値とまではいかずとも当然、激安価格での金型販売が可能となるでしょう。「お客様の求める品質が合格品質」というのは、けして世界共通認識ではないのです。
先述のローカル型屋ですが実は、おもちゃ製造用の金型製作で人気のある型屋だそうです。次から次へと仕事が舞い込む売れっ子ローカル型屋にとっては、「形がちゃんと出て、相手部品と嵌合もできるのに、何が問題なんだ?」という言い分なのでしょう。おもちゃであれば、多少のバリや、寸法違いも許容できるケースがあるいは多いのかもしれません。簡易なおもちゃであれば1、2年で壊れたとてクレームにもならないでしょうし、機構部のネジ穴が多少緩くても誰も怪我をしないでしょう。ローカル型屋にしてみれば、T0でちゃんと形が取れたのに、残りの半金を支払わない日系企業の方が悪徳に見えているかもしれません。価値観や感覚が大きく異なる海外で、求めるサービス品質にあったサプライヤーを探すことは想像以上に難しいのです。

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