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Very Different Customs

徹底して異なる価値観

CAUTION!

驚きのネタは尽きない

周りに海外赴任されている方がおられれば、「えっ?本当にそんなことがあるの?」「話を大きくしてるだけなんじゃないの?」と疑いたくなるようなエピソードをお聞きになる機会があるかと思います。海外サプライヤーに限った話ではありませんが、自国でも多様な価値観、世代間格差を実感することが多い現代において、海外の価値観を理解し、それに対応していく能力は並大抵のものではありません。海外サプライヤーとの取引は、そういった大きな差異に対応できるか否かの、発注側の対応能力も問われることになります。PRONICSグループでもベトナム、タイ、中国を中心にビジネスを行っており、「想像をはるかに絶する価値観の差異」を実感することの連続でした。差異の許容量には個人差があるので、多くの人が「強烈な差異」と思うようなことも「何ら変哲の無い日常だ」と思われる方もおられるでしょう。とはいえ多くの人はそんな差異許容スペシャリストにはなれません。ここではPRONICSグループの海外赴任者たちが実体験した様々な差異をご紹介することで、別の文化を持つ者同士が共に海外ビジネスを進めることの難しさや、自前の思い込みは捨て去らなければ物事が進まない現実、ひいてはそれを乗り越えた面白さをお伝えできればと思います。

消防監査では新築物件を実際に焼く

これはPRONICS HANOIで実際にあった検査です。ハノイ工場の操業開始から4年目、新建屋の竣工時に消防局が監査にきました。消防局の担当者はおもむろにバーナーを取り出して鉄骨柱を焼きだしたのです。「新築物件の柱を焼く」とは、さすがに海外に慣れているPRONICSの日本人駐在者も驚きを禁じ得ませんでした。PRONICSはベトナムのホーチミン市やロンアン省にも拠点がありますが、それらの消防検査で建屋を焼かれたことは流石にありません。ハナム省にPRONICS HANOIの工場を竣工した際もそんな検査はありませんでした。どういうわけか新建屋の鉄骨柱だけが焼かれてしまう運びとなったのです。後日、施工業者が柱を施工しなおしていたので、おそらく施工業者的には「実際に焼く検査」が折り込み済みであった様子でした。
ホーチミン市でも、ロンアン省でも、20年間ベトナムでビジネスをしてきても、終ぞ経験してこなかった「実際に焼く検査」ですので、あるいはハナム省の消防局特有の検査なのかもしれませんし、さらに悪い想像をすれば担当者が独自に拘った検査であったのかもしれません。スタンダードが曖昧で、法律の実務運用における解釈も担当者レベルで認識が異なることが多いベトナムですので、たまたま当たった担当者の当たり外れは相当に大きいものです。
これは想像でしかありませんが、PRONICS HANOIの新建屋では耐火塗料を選定していたので、「実際に焼く検査」は塗料の引火性試験であったのではないかと推察しています。ただ、塗料の引火性試験なら塗料メーカーにエビデンスがあるはずですし、わざわざ新築物件を焼かずとも、施工時に鉄骨柱と同じ建築材に、同じ塗料を塗布した検査用サンプルを用意すれば良いだけのことでは?と思わずにはいられません。消防局がメーカーのエビデンスも、施工業者の検査用サンプルも信用できないということなのであれば、検査後の再施工で塗布される耐火塗料も信用できないのでは?とも思いますが、そこは拒否権が認められない消防局の監査です。消防局の担当者は鉄骨柱を1時間かけて焼いたら納得して帰って行きました。いくつもの疑問が沸き上がり到底、承服でき兼ねる部分も往々にありますが、そこはそれ、差異や相違があるなかで、海外ビジネスには道理が通らないことも頻繁にあります。

人命に関わろうとも、バレなきゃOK?

乗車したタクシーに「シートベルトがない」、「窓ガラスがない」、「シートがボロボロ」などは新興国では日常茶飯事ですが、今ではGDP世界第2位の中国ですら、「持ってないとドアが開くからドアノブを持って押さえておけ」と言われるなど、危険なタクシーに出くわすことはしばしばあります。一番驚いたのは、2010年頃に上海で乗車した「床が無い」タクシーです。座席の足場部分の台枠が破損して地面が見える状態のタクシーに、横座りで両足を座席に上げて乗車するのです。そのまま乗車して目的地へ向かったPRONICS社員も、社員ですが・・・。
構造フレームが大きく毀損した状態で車が街中を普通に走行していることも驚きですが、それ以上に、21世紀に入って久しい大都市・上海でこのような危険なタクシーが走っていることに驚愕でした。戦後すぐ、文革後すぐの話ではありません。道路が未整備で、あらゆる原動機を自由カスタムするような発展途上国の話でもありません。21世紀を10年も過ぎた、大都市・上海での話です。
中国では多くの白タクシー(未認可の個人タクシー)が取り締まりの手を逃れて営業しています。この白タクシー、意外なことに車両は綺麗なことが多いのです。理由としては、白タクシーは車両が綺麗でないと仕事が取れません。流しの営業ができないので、駅などで客待ちをするか、電話で呼び出しを受けるかしか方途はないからです。客待ちタクシーが複数ある中でわざわざ窓の割れたボロボロのタクシーは選びませんし、どうせ呼び出すなら安全運転で、清潔で、煙草を吸わなくて、道をよく知っている白タクシーを呼びます。もちろん認可のメータータクシーの中にも綺麗な車両がたくさん走っています。2010年上海万博の会場周辺は新車タクシーばかりが走っており感動したものです。ところが、認可タクシーの中には、先述のような危険なタクシーも少なくない上、認可タクシーに見える未認可タクシーが多く存在するのです。
どの国でも、メータータクシーに乗車すると、登録されたドライバーの顔写真入り証明書がダッシュボード上に掲示されていますが、2010年頃の上海ではドライバーと証明書が全くの別人、顔かたちのみならず、世代、性別すら完全に異なっている、なんていうことが日常茶飯事でした。家族・親戚の代行か、他人へ車ごと売り飛ばしているのかは定かではありませんが、どう考えても未認可の闇タクシーだったのでしょう。こういった闇タクシーは往々にして車両の整備ができておらず、人物的にも、車両的にも危険だと感じることが多かったように思います。
都市部から取り締まりはどんどん厳しくなっているので、今の上海では闇タクシーも少なくなっているかもしれませんが、地方では2010年当時と似たり寄ったりの状況ではないでしょうか。人命に関わる運送分野で、認可業務や整備業務などの人命に直結する部分がおざなりで、いつまで経っても取り締まり切れないというのは、「バレなければ何でもアリ」の文化を反映しているのかもしれません。

「飲みニケーション」が好き以上に、文化である

ベトナムでの労務マネジメントとして一般的に言われることが「レクリエーションが重要」ということです。もちろん給与などの基本待遇が優先されますが、忘年会、誕生会などの飲み会や社員旅行、慰労パーティーなどレクリエーションがない会社ではジョブホップが急増するのです。
ワーカーや、ホワイトカラー、マネジメント層と職種が隔絶的な欧米では考えられないほど、アジア地域ではビジネスシーンでの「飲みニケーション」をはじめとしたレクリエーションが重要だと言われています。中国、韓国でも仕事終わりに飲みに行くことでコミュニケーションを図るビジネスマンは多くいます。日本でも長年に渡って「飲みニケーション」文化がありましたが、1990年代以降、不景気による会社帰属意識の低下、パワーハラスメントの顕在化、勤務時間外に参加を強制される労務上のグレーさ、若者のアルコール離れ、働き方改革など、様々な要因で日本における「飲みニケーション」文化はすっかり廃れてしまいました。一方、ベトナムでは中国や日本の比ではないほどに「飲みニケーション」が大切で、外国人管理者においては労務マネジメント業務の一環とも言えるほどです。
ベトナム人はシャイです。そして、ベトナム人にとっての最優先事項は家族です。非常に家族の絆が強く、親類間における連帯意識も強固で、仕事よりも優先されることがしばしば。シャイなベトナム人と胸襟を開いた関係、願わくは家族のような身内感覚の親しい関係を築くには「飲みニケーション」が一番有効ということです。ベトナム人男性の中には「一緒に飲みに行ったことの無い人は友人ではない」という意識の人もいるほどで、基本的に男性は大酒飲みがほとんどです。ところが、会社主催の宴会などで、またそれが30名程度の顔の見える宴会では特に、大酒飲みの男性陣が遠慮をして飲みません。女性の中にはお酒を飲まずに宴会に参加する方もいますが、スイーツや食事なども遠慮がちで、前もって少し食事をしてくる社員もいます。宴会で一緒に参加する上司や外国人経営者に気を遣っているのです。その壁を打破するには、互いのグラスにお酒を注ぎ、声を合わせて「モ・ハイ・バー・ヨー!!(1,2,3 Yoh!)」と共に楽しく飲む以外にないのです。それを繰り返すうちに、遠慮リミッターなどすぐに吹き飛びます。下戸の外国人管理者にとっては地獄とも言えますが。
先の写真には、真ん中に年配のご夫妻と男女の若者3人が写っています。ご夫妻はPRONICS HANOIのベトナム人女性リーダーのご両親で、奥に小さく写り込んでいる青シャツの男性が実兄です。お父様と肩を組むのが日本人技術者、右端の女性2人がPRONICS HANOIとホーチミン工場のスタッフです。リーダーのご実家へホーチミンスタッフと、日本人赴任者や工場長、日本からの出張者などをご招待いただいて、総勢30名ほどで大宴会を開いた時の写真ですが、この時も酒好きの父ちゃんと一緒にお酒をしこたま飲みまくり、皆すっかり出来上がって写真のような胸襟の開きっぷりです。いつも日本人を気にかけフォローしてくれるリーダーの心遣いに感謝しつつ、経営・管理層がスタッフのご実家に伺うというレアケースにドギマギしていましたが、日本ではなかなか経験できないこのような絆の有り方、絆の深め方はとても素晴らしい文化であると実感しました。

良い意味でも、悪い意味でも、価値観を異にする者同士がビジネスを成立させていくのは難しいもの。異なる視点がプラスに働けば、多様性のある素晴らしい結果が得られ、差異をコントロールできなければビジネスは失敗に終わります。
「ワーカーが現場で仕事中に寝る」「価格を10倍で吹っかけてくる」「他人の物を平気で売り飛ばす」などなど、比較的想像が容易な悪い差異でも困惑することは多いですが、実際の海外ビジネスでは超絶な差異がしばしば私たちの目の前に転がってきます。そういった諸々の差異が本当に困難とも言えますし、自分の価値観を飛び越えた文化に触れることは面白味とも言えるでしょう。ビジネスシーンでは「面白い」と余裕の持てるテーマ自体が少ないでしょうし、確実にビジネスを進めて行かなければならない日々です。ビジネスパートナーはぜひ、「高い品質」「確実なレスポンス」そして、かゆい所に手が届く「提案型サービス」など、安心できるサプライヤーをお選びください。

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